上顎前突(じょうがくぜんとつ)とは、上あごの歯や骨が前方に突出している不正咬合の一種です。いわゆる「出っ歯」と呼ばれる状態で、見た目の印象に影響するだけでなく、噛み合わせのバランスや発音、口腔内の清掃性にも関わってきます。
重度になると、口を閉じにくくなる、口呼吸になりやすいなど、生活の質(QOL)に影響するケースも見られます。
また、上顎前突は日本人に比較的多い不正咬合のひとつであり、子どもから大人まで幅広い年齢層で治療が行われています。
上顎前突の原因のひとつには、遺伝的要因が挙げられます。両親や近親者に同様の歯並びがある場合、骨格や歯の生え方が似てくることがあり、上あごが前方に出やすくなる傾向があります。特に骨格性の上顎前突は、上あごの成長が過剰であることや、下あごの成長が相対的に劣っていることが背景にあります。このような骨格の不調和は、見た目だけでなく機能面にも大きく影響します。
一方で、成長過程での習慣が原因となることもあります。代表的なのは、指しゃぶりや舌を前に出す癖(舌突出癖)、口呼吸などです。これらの癖は歯列や顎の発育に影響を与え、徐々に上顎前突の症状を引き起こす可能性があります。また、乳歯の早期喪失や、咬み合わせに偏りがある場合も、正常な顎の成長が妨げられ、不正咬合につながることがあります。生活習慣の見直しも、予防と改善として大切です。
上顎前突の改善には、症状の程度や年齢、顎の骨格の状態に応じた矯正治療が選択されます。現在、当院では「ワイヤー矯正」と「マウスピース矯正(アソアライナー)」の2種類の治療法をご提案しています。
ワイヤー矯正は、歯にブラケットを装着し、ワイヤーの力で歯を徐々に移動させていく方法です。細かな調整がしやすく、幅広い症例に対応できるため、上顎前突のような骨格性の問題にも対応可能です。治療期間は一般的に1年半〜3年ほどで、月に1回程度の通院が必要です。
アソアライナーは、透明なマウスピースを1日20時間以上装着し、段階的に歯を動かしていく矯正方法です。見た目が目立ちにくく、食事や歯みがきの際に取り外せるのが特徴です。2週間〜1か月ごとにマウスピースを交換し、必要に応じて治療計画を見直す「リファインメント」(追加の型取り・装置作成)を行いながら進めます。
治療期間は症状によりますが、平均して1〜2年程度が目安です。軽度の上顎前突であれば、アソアライナーでも効果が期待できますが、顎の骨格に大きなズレがある場合にはワイヤー矯正が適しています。
当院では、患者さま一人ひとりの症状に合わせて、ワイヤー矯正やアソアライナーによるマウスピース矯正をご提案しております。どちらの治療法にもメリットがあり、症状の程度やライフスタイルに応じて適切な方法を選択することができます。
上顎前突でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。精密な診断と丁寧なカウンセリングを通じて、安心して治療に取り組んでいただけるようサポートいたします。
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